北高ブログBlog

【30-2】 高校生の課題は「自分づくり」

2018年4月11日

IMG_0099IMG_0100

入学式の式辞で、こんなことを話しました。

エリクソンのライフサイクル理論から、高校生世代の課題はアイデンティティ(自我同一性)の確立であることを紹介したうえで、それを私流に「自分づくり」と言い換えて、大切なことを三つ、新入生に語りかけました。(以下は、式辞からの引用です。)

一つ目は、「豊かな人間関係を築く」ことです。

私たち一人一人は点にすぎませんが、二つの点を結ぶと線になり、ある方向性が表れます。そして、その線とは別のところにあるもう一つの点をつなぐと面が定まり、広がりが生まれます。さらに、その面と異なるところにある点をつなぐと立体になり、奥行きが出てきます。

二つの点を結ぶ線が示す方向性は目標と言い換えてもいいでしょう。一人では動き出せなかったけれど、相棒を得て人は動き出します。目標を共有する仲間が増えてくればそれだけ大きな力を発揮できるようになります。しかし、それが「同じ意見でなければ仲良くできない」「同じ行動をとらなければ仲良くできない」関係になってしまうと、同調圧力が働いて、かえって「自分づくり」のさまたげになりかねません。そこで、その線とは別のところにある点とつながる、つまり、自分とは違う目標を目指す人、自分とはちょっと考え方の違う人と関係を築くことで、自分の考え方や価値観を客観的にふりかえることができるようになります。同じ面にある点同士のつながりは、高校生という同じ世代の関係ですが、この面とは別のところにある点、例えば、世代の異なる人や、文化的な背景を異にする外国人とかかわることでさらに視野が広がります。

北高では、地域の人々と協働するボランティア活動やインターンシップ、また、タイ王国やオーストラリアの高校生との交流を推進しています。こうした機会や場を「自分づくり」に生かしてほしいと思います。

二つ目は、「学ぶ構えを持つ」ことです。

学校とは、「知らなかったことを知る場所」です。しかし、「知る」だけに終始していると、これからの時代を生き抜く力は身に付きません。「わかる」から「できる」へ、「知る」から「知ったことを活用する」へと、学びの質の転換が求められています。

本校は、県教育委員会の指定を受け、他校に先駆けて、アクティブ・ラーニングを取り入れた授業づくりの研究に取り組んでいます。実験・実習はもちろん、グループやペアの活動、プレゼンテーションなど、様々な活動を授業に取り入れています。そのねらいとするところは、皆さんの主体的な活動を通して、「考える力」を鍛えることにあります。

ところで、本校の正門を入ったところに据えられた石に刻まれた「学而思」の三文字に目をとめた人はいるでしょうか。「学而思」は『論語』にある言葉です。そしてあの字は、初代校長の相原寅松先生が、日本で初めてノーベル賞を受けた湯川秀樹博士にお願いして書いていただいたもので、以来、本校の校是として大切にしてきました。「学而思」という言葉は、学んだ知識を活用できるようになるには、その間をつなぐ「思ふ」すなわち「思考」「思索」が不可欠であることを教えてくれます。

「学而思」の精神を受け止め、しっかりとした「体の構え」「心の構え」を持って、学びを深めていってほしいと思います。

三つ目は、「自由であれ」ということです。

「自由」には二つの意味があります。一つは「〇〇からの自由」、つまり、「制限や束縛を受けないこと」です。英語のFreedomを「自由」と訳すようになったのは幕末のころですが、「自由」という言葉はもともと我儘放題という意味で使われていたので、福沢諭吉は、「自由」と訳すことでFreedomが誤解されるのではないかと心配しました。「自由」をはき違えた無責任な言動の原因の一つは、Freedomを「自由」と訳したことにあるのかもしれません。

ところで、「自由」には、「自らにもとづく」「自らによる」という、もう一つの意味があります。「自由」の「自」は「みずから」「自分」、「由」は「よる」「もとづく」という意味を表します。自分で考え、判断・選択し、行動する。そして、その結果について責任を負う。これが「自立」した生き方、独立自存のあり方です。

 

  • 新設された人間創造コースで学ぶ楽しさを知ってください
  • 全国で北条高校の英語力アップが注目されている理由
  • 多可・西脇・加東・小野からでも通いやすくなりました