北高ブログBlog

第74回卒業証書授与式 校長式辞

2022年2月28日

式辞 ~ 第七四回卒業証書授与式にて ~

春という季節ほど、私たちの生活の中で変化を感じる時は、他にないと思います。しだいに日差しが柔らかく、まぶしくなってきました。草や木や土の匂いも新鮮に感じられるようになりました。厳しい冬に耐えていた力、静かに時を待っていたエネルギーが、一気に噴き出してくる季節です。

そんな時を迎えると、私たちも新しいものに向かって歩み出していこうとする気持ちがつのってきます。自然の変化と共に、人も移り変わっていく季節です。

 

本日ここに、加西市長西村様、PTA会長橋本様をご来賓として迎え、多くの保護者の方々のご出席をいただき、兵庫県立北条高等学校第七十四回卒業証書授与式を挙行できますことを心から嬉しく思います。誠にありがとうございます。

ただ今、百十一名の皆さんに、本校の課程を修めたるしるしとして、卒業証書を授与いたしました。

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。本校七十四回生である皆さんは、平成三十一年四月に入学してから、この三年間の高等学校時代に見事な成長を遂げて、今、飯盛野に建つ、思い出多い学び舎を巣立とうとしています。本校で過ごした年月のことを、様々な気持ちを織りまぜながら、思い返していることと思います。

 

さて、早春の季節に私たちの目を楽しませてくれるのは、とりわけ梅の花です。梅を詠み込んだ詩歌は数多くありますが、私は高校時代の国語の時間に出会った中村草田男(なかむらくさたお)の俳句を思い浮かべました。それは、

勇気こそ地の塩なれや梅真白(うめましろ)

という句です。塩は物の腐敗を防ぎますから、「地の塩」があれば、地上にある物は新鮮に保たれます。それとともに、「地の塩」という言葉は、勇気を持って、社会のために無償で尽くすことの例えでもあります。私たちの住む社会から濁りある物を取り除いて、社会を向上させる規範となることであり、また、そのようなことを行う人のことでもあります。一人ひとりが勇気を持って、みんなのために尽くそうとする気持ちを持たないと社会はしだいに腐っていってしまいかねません。

この俳句を中村草田男が作ったのは第二次世界大戦の末期一九四四年です。かつての教え子達が成長した後に、まだ学生の身でありながら戦いの火の中へ出陣していかなければならない状況下に置かれたことに際して、無言で書き示したものであると伝えられています。未だに、世界では各国の利害を背景にした核の恐怖や戦争、内戦が行われています。いかなる理由を設けようとも戦争を容認することは出来ません。

俳人・中村草田男は、「勇気こそ地の塩なれや梅真白」という、わずか十七文字の中に、凜と咲く白い梅の花に託して、社会を正そうとする勇気と、戦争への思いとを表現しているのだと思います。

卒業生の皆さんには、勇気を持って社会のために尽くそうとする気持ち、無償でみんなのために力を注ごうとする気持ちを持って行動して欲しいと願っております。

 

そのようなことを言いながらも、卒業生の皆さんが船出をしていく世の中は、コロナ禍のただ中にあります。社会に直接巣立っていく人たちも、進学する人たちも、これからの行く先に、大きな期待や希望とともに、いくらかの不安を抱いているかも知れません。けれども、長い人生の途上には、順風の時もあれば逆風の時もあります。いつまでも同じ状況が続くとは思いません。順境にある時も逆境にある時も、生きる姿勢を変える必要はないのでないかと、私自身は考えております。

どのような状況にあっても、人は、その人その人に特有の個性や特性をそなえて、それを育て上げていくことが大切です。卒業する皆さんには、これからも自分の個性や特性を存分に伸ばすことを心がけてほしいと願っております。また、多様な個性や特性を受け入れることも忘れないでください。自分らしさを発揮することが、今の社会を生き抜いていく力にもなるはずだとおもいます。

皆さんは、これまでに、何か夢中になるものを持ったことがあるでしょうか。高等学校時代に持った人もいるでしょうし、まだ持ったことがない人もいるかも知れません。夢中になるものにまだ出会っていない人は、これからでも遅くはありません。損得勘定とは関係なく、打算的な思いからでなく、夢中になれるものに出会ってほしいと思います。それが個性や特性を育てていくことになるのです。

これからの長い人生の間に、何を求めて、何をよりどころにして生きていくかということは、一人ひとりが探し出すべきものであります。夢や希望を大きく描いて、果敢に生きていってほしいと願っております。物事が成し遂げられるかどうかは、その人が持っている能力によるのではなくて、夢や希望をいつまでも持ち続けて、それを実現しようとする決意や情熱がどれほど大きいものであるかということに関わっているのであると思います。本校を卒業していく皆さんには、これからも成長を続けて、社会の中で、自分が生きていくための、しっかりとした基盤を築いていくことを期待しております。

 

最後になりましたが、保護者の方々に一言申し上げます。ご子弟は蛍雪の功が成って、晴れの卒業の日が迎えられました。誠におめでとうございます。そして、保護者の方々から本校教育に賜りましたご支援に、改めて深く感謝申し上げます。ご子弟は、本日をもって本校を巣立たれますが、今後は同窓会である柏葉会の会員として、母校と絆を持ち続けられることになります。令和五年度には創立百周年を迎えます。北条高等学校をいつまでもご支援くださいますようお願い申し上げます。

来賓の方々も、本校を卒業して羽ばたかれる若人を、いつまでも温かく見守ってくださいますようお願い申し上げます。

 

卒業生の皆さん、いよいよ門出です。私たち北条高等学校の職員は、皆さんの今後の発展と活躍を心から期待するとともに、それぞれの道を切り開いて進んでいってくれるであろうことを信じています。皆さんは、大きな夢や希望を思い描いて、それを現実のものにしていこうとする固い決意や強い情熱をもって、をれを実現させるとともに、この世界を支える一員として、広く周りの人や社会に貢献する働きも果たしてほしいと願っております。健康に留意し、凜々しく健気に生きていってください。皆さんの前途に幸多からんことをお祈りし、もって式辞と致します。

 

令和四年二月二十八日

兵庫県立北条高等学校校長

塙  守 久

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